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厳密な意味における昔話は,明らかに神話や伝説などと区別されている.柳田国男の説によると,昔話と伝説との関係については,次のような諸点を中心にまとめられる.すなわち,第1に,昔話はだれからも信じられていないが,伝説はある程度まで信じられている.第2に,昔話は「昔々,ある所」の物語であるが,伝説はどこか決まった場所と結び付いている.第3に,昔話は何か決まった形式を持っているが,伝説は特にこれという形式を持っていないという(参1).さらに,昔話の形式上の特色は,発端の「昔」「とんと昔」「昔があったけど」などの文句,結末の「どっとはらい」「昔まっこう」「いちご栄えた」などの文句,中間の「……そうな」「……げな」「……とさ」などの叙法というように,おもに3つの部分に表れるというのである(参2).もっとも,ここには大まかな原則を示しただけであって,実際には何らかの話型にかなうものでも,すべてそのような表現をとるわけではない.やはりいくらか煩雑ではあっても,内容と形式との関係を考えながら,昔話の範囲を定めなければならない.
関東地方の南部の一帯は,多摩川の流域の各地を含めて,昔話の伝承の稀薄な地域に属するといえよう.これまで昔話として取り上げられたものがかなり少ないだけではなく,そのわずかな資料によっても,ここに記したような形式を備えたものはほとんど認められない.柳田国男の『日本昔話名彙』(参3),関敬吾の『日本昔話集成』(参4),同氏の『日本昔話大成』(参5)などと比べると,一応日本の昔話の話型にかなうものもいくらかは知られるが,直ちに多摩川との関連を示すものは極めて乏しいようである.