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(1) 耕作放棄
山地地域は,すでに述べたように人口減少が激しく,特に若年層の村外流出による労働力の不足が著しく,さらに婦女子の村内等の中小工場への就業や,年齢構成の高齢化は農地や山林の利用にも大きな影響を及ぼしている.多摩川上流地域では,農地は礫質壌土の急傾斜地がほとんどで,ただでさえ耕作は容易ではないが,上記のような状況から,最近,農業的土地利用は粗放化されたり,耕作放棄されたりする場合が多い.表8.4.6は耕作放棄の状況を表したもので,五日市町と奥多摩町の両町については旧村別の状況も示した.なお,ここで耕作放棄とは「以前耕作したことがあるが,過去1年以上作物を栽培せず,しかも,この数年の間に再び耕作するはっきりした意志のない土地」をいう(1980年世界農林業センサスによる).表8.4.6からも明らかなように,総農家数の約10%以上の農家が耕作放棄地をもっており,経営耕地面積の10%以上が耕作放棄されている地域が広く分布している.特に耕作放棄地をもつ農家の割合は,五日市町の旧小宮村・旧戸倉村・旧五日市町,奥多摩町の旧氷川・小河内の両村が高く,山梨県の小菅村の場合は54.1%,丹波山村は46.9%と約半数の農家が耕作放棄地をもっている.また,耕作放棄地の面積の割合は,特に山梨県の小菅・丹波山の両村が極めて高く,約1/3していることが注目される.このような状況下,今後,不耕作地の拡大,耕地の荒地化・山林化,山林の管理機能の低下などが懸念される.
(2) 財政力指数と農家所得
山地地域では,人口減少,農林業の衰退,地域産業の不振,有力事業所が少ないことなどを反映して,各自治体の税収入は伸びず,財政基盤はぜい弱である.財政力指数(規準財政収入額/規準財政需要額)は小菅村と丹波山村はともに0.09(1977〜1979年,3カ年平均),檜原村0.16(1977年),奥多摩町0.53(1977年)で奥多摩町を除く諸村はいずれも全国的にみて極めて低い.ちなみに都下の市町村の平均財政力指数は0.87(1977年)である.したがって,地方交付税等,財政上,国への依存度が非常に高い.農家1戸当たりの年間所得(1980年度)は檜原村で209万円,奥多摩町で221万円で,うち農業所得は両町村とも約5%にすぎず,他は農外所得である.これは都平均の農家の年間所得437万円,全国山村平均298万円からみてもかなり低いことがわかる(参24).
(3) 可住地人口密度
山地地域の総土地面積に対する人口の割合(普通一般にいわれる人口密度)は,丹波山村11.8人/km2,小菅村24.7人/km2,檜原村40.3人/km2,奥多摩町43.3人/km2といずれも低く(表8.4.7),山村は人口稀薄だとよくいわれている.しかし,奥多摩地域は総土地面積の約95%が林野であるうえ,急峻な山岳地域で,30°以上の急傾斜地が総土地面積の約60%を占め,平坦地,すなわち居住適地に乏しく,可住地面積は極めて狭いといえよう.したがって,可住地面積を仮に各町村の総土地面積−林野面積とした場合,可住地人口密度は430〜630人/km2となってかなり高くなる.これを人口密度と比較すると10倍以上となり,特に丹波山村の場合は実に37.7倍となる(表8.4.7).このように実質の人口密度は都市なみに高い(参25)(参26)のであるが,本地域はすでに触れたように,土地資源に乏しいうえ,山林の多くが東京都の水源涵養林であるため土地利用上の制約があり,また,商工業の雇用の機会も少なく,交通条件も劣悪な所が多い.
このような環境下にあって,檜原村・奥多摩町・小菅村・丹波山村はいずれも国から山村振興法に基づく振興山村に指定され,地域住民の生活向上のための種々の過疎対策が計画され,一部実施されている(参27)が,その前途は容易ではない.