| 前のページに戻る | 次のページを見る | 目次に戻る | 表紙に戻る |
現在の多摩川は都市河川という宿命からか,防災面が強調されつつある.限られた河川敷は低水敷の洪水によってますますせばめられてゆく.
河川は河川特有の景観を持っている.上流では渓流の水に濡れた岩肌と,岩隙にしがみつきながら生育する湧水辺植物群落の美しさ,中流では洪水のたびに白い砂洲が形成され,強い日射を浴びながら侵入しつつある先駆植物群落と,流路の変更によってかろうじて取り残されたヤナギの低木林,下流にあっては銀白の穂をなびかせるオギの大群やゆっくり流れる水面に影を落とすヨシやマコモなど,河辺の植生が演ずる景観は,平地にはみられない動的な美しさにあふれている.周辺域の大部分の植生が日々退行する中にあって河辺は数少ない自然環境を備えている.河辺の植生はもとより,それを生活の動とする昆虫や小動物,さらに心の糧を求める人間も含めた,1つの大きな系を維持するためにも,河辺景観の保育は極めて重要なことである.過剰防衛とも思える河川改修,元金も失うほどの利水,地先の過剰要求による高水敷の自然性の貧化などこのままの施策では多摩川は単なる排水路に変じるのもそう遠いことではない(宮脇,奥田1976)(参12).