京浜工事事務所沿革史
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2.京浜工事事務所の現況と所掌事務

 都市河川特有の問題を数多く抱える多摩川,鶴見川,相模川を所掌している当事務所の現況とこれからの課題について以下に概説する.

2.1 多摩川

2.1.1 工事実施の基本方針

 多摩川流域の都市化に伴い,水源地での開発は雨水流出機構を大きく変化させ,また,洪水に対して危険である区域にも人口,資産の集積がなされた.このような治水・利水上の流域の変化に対応するためと昭和22年9月洪水や昭和49年9月洪水が大規模であったことから,治水の安全度を向上することが要請され,昭和50年4月に多摩川水系の工事実施基本計画を改訂し,浅川合流点下流で基本高水ピーク流量8,700m3/s,上流ダム群による洪水調節量2,200m3/s,河道の計画高水流量6,500m3/sとする計画を定めた.

 この計画では,流域における種々の条件,並びに他の諸河川とのバランス等を勘案し,今後の治水の安全度を1/200すなわち,200年に1回程度起こるであろう洪水時に対応できるよう計画が策定されている.

2.1.2 改修工事

 工事実施の基本方針に沿って,現在の多摩川の改修工事では,高潮対策,水衝部対策,本川上流部および浅川の無堤部対策が3つの柱となっている.

 (1)高潮対策

 本川下流部左岸羽田地区は,高潮区域であるが無堤地区であるため洪水の際に浸水被害にたびたび見舞われている.そこで,浸水被害を除くべく高潮堤の設置を急ぐものであり,海老取川合流点より羽横線多摩川橋間を早期に完成させるべく鋭意努力している.

 (2)水衝部対策

 多摩川は比較的急流河川であり,そのため蛇行箇所も多く,蛇行の外側(水衝部)については水当たりも強いため,護岸を施工し,河川の質的向上を計るものである.

 (3)無対部対策

 本川上流部及び支川浅川には無堤部,弱点堤防が多く,これら箇所の築堤工事が重点施策になっている.

2.1.3 河川管理

 多摩川の管理は,新河川法施行に伸い昭和41年に河口より万年橋(青梅市)までの間を東京都及び神奈川県より引き継ぎ,占用及び工作物設置等の許認可処分をはじめ河川区域や河川予定地の指定,廃川処分,官民境界の確定,河川美化等の事務を所掌するほか,都市河川の管理として「多摩川河川環境管理計画」に基づく占用関係の実施及び見直し,訴訟関係,不法占用対策等を行っている.また,出張所による河川巡視の外,日常管理に河川愛護モニターを依頼し河川の管理と河川美化運動等に民間の協力を得ている.

 沿川都市の発展と共に河川管理上の課題も多岐にわたっており,水利用,空間利用等に検討を図っていく必要がある.

2.2 鶴見川

2.2.1 流域概要と改修方針

 鶴見川水系は,その源を東京都町田市に発し,多摩丘陵を東流し,恩田川,鳥山川,早渕川,矢上川等を合わせ,流向を東南に転じ,横浜市鶴見区の工業地帯を湾曲して流下し東京湾に注ぐ,全国河川の中でも典型的な都市河川である.

 その流域は,東京都及び神奈川県にまたがり,幹川流路延長42.5km,流域面積235km2で下流部は川崎,横浜の市街地を貫流している.

 昭和30年代後半より流域の都市化が急激に進展し,昭和33年には流域の10%が市街地であったのが,昭和60年には73%となった.このため雨水の浸透域が少なくなり流出機構が変化し,洪水到達時間が現在では2時間以内となり,昭和30年代の1/5〜1/6にまで短縮されている.さらに,降雨量に対する河川への流出量も著しく増大してきている.

 このような状況に対処するため,改修工事は全国異例の速さで進捗しつつあるが,河川の安全度は極めて低い.出水期には,気象状況,河川状況に十分留意することが必要であり,適切な水防活動が重要となっている.

 昭和41年3月には狩野川台風の被害により末吉橋地点における計画高水流量を900m3/sに改訂したが,昭和41年6月,台風4号洪水は計画規模を上回る大洪水であったため昭和49年4月に基本計画の改訂を行い,末吉橋での基本高水流量2,300m3/sのうち,河床の大幅な掘削及び築堤により河道で1,800m3/sを流下させ,遊水地と放水路によりを500m3/sを調節するものとして改修工事を行っている.

 鶴見川本川では,昭和57年度より第6次5カ年計画が策定され,河道については,治水暫定計画を立て掘削・浚渫を主要工事とした950m3/sの改修が行われ,58年度末に概成している.

2.2.2 最近の洪水状況

 鶴見川は河川の勾配が緩く(落合橋上流で1/600〜1/1,500,下流部1/1,500〜1/3,000),東京湾の潮位の影響を受ける区間が長いといった自然条件に加えて,昭和30年代以降の都市化に伴う土地利用の変化もあり,治水整備にもかかわらず,2〜3年に1度程度の割合で水害にあっている.昭和41年6月の台風第4号による水害と,昭和51年9月の台風17号による水害は,まだ記憶に新しいものである.

近年の主要出水記録

項目

洪水年月日  
流域平均
二日雨量
mm
水位
(末吉橋)T.P.
m
ピーク流量
(末吉橋)
m3/s
備考
昭和32年6月27日
146
2.35
190
台風第5号及前線
33年9月26日
353
3.76
490
台風第22号、全域で氾濫
41年6月28日
306
3.94
510
台風第4号、全域で氾濫
推定1,000m3/s
46年8月31日
142
2.33
340
台風第23号
51年9月9日
166
4.36
700
台風第17号、各所で氾濫
52年9月10日
181
3.89
600
台風第9号
54年10月20日
約141
3.00
400
台風第20号
56年10月22日
約181
3.49
755
台風第24号
57年9月12日
219
402
1,051
台風第18号

 昭和41年台風4号による水害−台風4号の影響により6月27日の夜半から6月28日の夕方までの2日間に306mmという記録的な豪雨に見舞われ,鶴見川の各所において堤防が決壊し,あるいは越水し,床上・床下浸水約18,000戸に及んだ.

 昭和51年台風17号による水害−9月8日から9日にかけて166mmの降雨があり,このため,鶴見川の中・下流部においては,堤防の決壊・越水により,床上,床下浸水約3,950戸という被害を蒙った.

 昭和57年台風18号による水害−9月10日から12日にかけて全流域に270mm前後の降雨を記録し,末吉橋では計画高水位を20cmも上回り,中・下流部から溢水し,浸水家屋483戸(うち堤外民地22戸)の被害があった.

 こうした被害に反するように,比較的歴史の古い水防活動*も近年沿川住民のサラリーマン化により次第に弱体化しており,水防訓練等で組織強化を図ると同時に水防資材の充実を図り,水防意識を向上させていかねばならない.

2.2.3 鶴見川の総合治水対策

 (1)背景と目的

 鶴見川流域は昭和30年代以降,流域の開発が急速に進展し,治水施設の整備を推進しているにもかかわらず,開発による洪水流出量の増大等により,常に水害の危険に脅かされている.また流域における急激な都市化の進展は,治水対策上も多くの困難な問題を発生させており,従来通りの治水安全度を向上させる事は困難な状況になっている.

 このため,治水施設の整備を早急に実施するとともに,流域が従前より有している治水機能の維持を図る方策を広く流域関係機関の合意のもとに推進し,洪水時の被害軽減策をも含めた総合的な治水対策を講じる必要が生じてきている.

 こうした状況を踏えて,昭和54年度から総合治水対策特定河川事業がスタートし,現在までに全国で鶴見川ほか14河川が指定されている.

 鶴見川では昭和55年5月の建設省事務次官通達を受けて,同年9月「鶴見川流域総合治水対策協議会」を設置し,治水施設の整備と流域の開発・利用計画等との有機的な連携,調整を図るために具体的な対策等について協議を進め,昭和56年4月に同協議会の合意により 「鶴見川流域整備計画」を策定した.

 (2)流域整備計画の概要

 流域整備の方針−昭和60年度を目途に流域の開発を予測し,上流区間(落合橋上流)においては50mm/h降雨に対し,下流区間においては戦後最大降雨に対して安全となるよう,流域および河川における対策を講じるものとする.

 河川の整備−上流区間の河川改修については,必要な流域対策を行うことを前提として50mm/h降雨により河川に流入する流量を安全に流下させうるように必要な治水施設の整備を行う.また,下流区間については,現在実施している大規模浚渫事業等の促進を図ることにより950m3/sを整備するとともに多目的遊水地を建設する.

 地の域整備−地域条件から流域を保水,遊水,低地の3地域に区分し,それぞれの地域で以下の方針で対策を実施することとしている.

 i)保水地域

 市街化調整区域の保持等により自然地の保水機能を保全していくとともに,新規の開発地および既開発地に対し,雨水貯留施設等を設置することにより保水機能の保全,増進を図る.

 ii)遊水地域

 市街化調整区域の保持,営農環境の改善,盛土の抑制等により,現在有している遊水機能の保全を図る.

 iii)低地地域

 内水排除計画を促進するとともに,本川の出水状況に応じたポンプの運転調整を実施する.また,貯留が可能な箇所では,貯留施設の設置を行う.

 その他−出水時の安全対策および住民への啓蒙対策として,警報避難システムの確立,水防管理体制の強化,浸水実績の公表,耐水性建築の奨励等の施策を実施するとともに,パンフレット等により流域住民の理解と協力を求める働きかけを行う.

2.2.4 大規模浚渫と多目的遊水地

 鶴見川流域は,東京〜横浜を結ぶ交通の要衝にあたっており,約40もの橋梁が架けられている.1,800m3/sの計画河道の対応する浚渫を実施するにはこの橋梁のほとんど架け替えなければならず,これは当面不可能である.しかし,流域における急激な都市化にともない著しく低下している鶴見川の安全度を早急に高める必要があり,橋梁架け替えは一部の橋梁に留め,残りの橋梁は必要に応じ補強することによりできうる限りの河床掘削をする緊急改修計画が策定された.

 緊急改修計画は,末吉橋地点における計画流量を950m3/sとし,既設橋梁との関係から計画河床まで約1.5〜2mを掘り残し,約320万m3の浚渫,掘削を行なうものである.昭和58年度緊急計画達成を目途に,ポンプ浚渫船(200PS級),パイプライン(約13km)及びブースターポンプの施設を製作設置し大規模浚渫を行った.

 さらに,戦後最大降雨を安全に流下させるために,横浜市港北区小杭地区に面積約101 ha,総貯水容量390万m3で200m3/sの洪水を調節できる多目的遊水地の事業に着手し,現在進めている.

2.2.5 河川管理

 鶴見川の流域では急激な都市化により洪水流量の増大,内水被害による家屋の浸水被害が増加している.また水質も,中・下流部で特に悪く,悪臭を放つほどであった.下水道整備や排水規制,ヘドロ浚渫等により,最近では徐々にではあるが改善のきざしが見られる.しかし,まだ全国有数の水質汚濁の著しい河川である.また,下流では,昭和28年頃より河川敷の不法占拠が著しく,河川管理上の大きな支障となっている.

2.3 相模川

2.3.1 流域概要と改修の現状

 相模川水系は,その源を富士山に発し,笹子川,葛野川,鶴川等を合わせ,山梨県の東部を東北に流れて,神奈川県に入り,道志川を合わせ流路を南に転じ,中津川等の支川を合わせて神奈川県中央を流下し相模湾に至っている.

 その流域は山梨,神奈川の両県にまたがり,幹川流路延長113km,流域面積は1,680km2におよび両県における社会経済の基盤をなし,本水系の治水についての意義はきわめて大きい.

 現河道の流下能力は約3,500m3/sと低く,早急に改修工事を進める必要があるが,河川敷の大部分が民有地であり,工事の施工が遅々として進まない状態が続いている.

 また前述したように,支川中津川において多目的ダムとして宮ケ瀬ダムが計画され工事中である.相模川の流域内の開発は著しく,流出機構の変貌にともない昭和49年4月に基本計画の改訂を行い,基準地点厚木で基本高水流量10,100m3/s,計画高水流量7,300m3/sとして改修工事が行なわれている.



*昭和9年に鶴見川水防予防組合の前身が発足



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